岐阜県文化財保護協会 -郷土の文化財を守り、子どもたちに伝えましょう-

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私の巡視活動

養老町担当 鈴木美義

養老町は、県内でも多数の各種文化財が所在する文化と歴史の町です。これら郷土の誇りともすべき文化財を保護するために、県文化財保護協会の委嘱を受けた文化財保護巡視員が巡視をしています。その巡視実施要項にあるように「地域に所在する文化財について巡視を行い、その管理状況を掌握するとともに、地域住民に対し、文化財の保護意識の高揚に努める。」を目標に活動を行っています。
 具体的には、養老町内に所在する206件の国・県・町指定文化財の内で、県指定文化財6件と町指定文化財32件が巡視の対象になっています。巡視活動は県文化財保護巡視員1名と養老町の場合は町指定巡視員2名が、それぞれに降雪期後と台風期後を中心に年2回巡視活動を行っています。

石畑 浄誓寺の町指定天然記念物「イヌマキ」の前で。 養老町巡視員(筆者左から二人目)

巡視の主な観点は、以下の4項目です。
1. 愛護標柱の設置状況の確認
2. 説明板等の設置状況の確認
3. 周辺環境の確認
4. 文化財の状況・その他

これらの観点に基づく巡視の結果は、規定の報告書に記載しています。特に問題のある指定文化財については別途に詳細状況を町教育委員会経由で県文化財保護協会に報告しています。
 巡視対象の38件の指定文化財は町内全域に分散しており、巡視は車を利用して一筆書きの要領で廻っていますが、中には「大威徳山竜泉寺跡」のように、徒歩で麓から片道20~30分かけて、ヒルと汗に悩まされながら巡視する文化財もあります。

このような巡視活動で感じたことは、次の3点です。
1. 巡視している38件の文化財の中にも、未だ愛護標柱や説明板が設置されていないものがあり、大切な文化財と認識され難いため、すべての指定文化財に愛護標柱を設置するよう教育委員会に要望したい。また、県指定文化財だけでも説明板の設置をお願いしたい。
2.「直江志津日本刀鍛錬所跡」など、周辺環境の整備が必要な指定文化財があり、管理者や地元の方々の協力も得て早急に対応が望まれる。
3.多数散在する文化財の中には盗難に遭っていても発見し辛いものがあるため、巡視活動の難しさを感ずる。
 例えば、文化財がき損された事例として昨年6月に、名勝及び天然記念物の「鬼岩」の巨石にロッククライミング用のハーケンが打たれていることが判明した。長年にわって巡視活動を行っていても、見付けられなかった。広い公園の中の急傾斜の場所に、多数分布する巨石の一つ一つを確認して巡視することは大変なことである。

今後、このような課題・問題点を文化財保護協会や教育委員会と連繋して改善を図るとともに、地域の宝物である文化財の大切さを地域の方々や小・中学生に啓蒙をはかるなど、文化財保護活動の発展に尽力したい。